300と数十日の食卓

食べること,本を読むこと,音楽をめぐる時間

【旅行記】12月の京都

生まれてから5年ほど前まで住んでいた街、京都で過ごした数日の(ほぼ)食べ物日記。

京都市内でよく見かけるのは、パン屋さん、お豆腐屋さん、珈琲店だが、最近はチェーンのラーメン店の進出が凄まじい。住んでいるならいざ知らず、たまの帰省時にせっかく食べるならそこでしか食べられない個人営業のお店。

このところよく行くのはこの2店舗。先ずは10-feetの行きつけでもある下鴨の「博多っ子」さん。白濁の豚骨スープはトロッとしているが、臭みも少なく、程よい甘さと脂で身体を温める。かつて年に数度旅していた博多でも、一日数軒ハシゴをするくらい豚骨ラーメンを食べ歩いたが、本場は飲みの〆という感じも強くて、この優しいお味には今まで出会えていない。ラーメンは豚骨系と鶏ガラしょうゆ系の二本柱で、種類により本場ストレート細麺と普通麺から選べる。

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もう一軒は注文してから大ぶりのチャーシューをスライサーで切ってくれる河原町丸太町の「らーめん大栄」さん。ここは繁華街にほど近い場所柄か、豪快なチャーシューの盛りが受けるのか男性客率が非常に高くて、お昼遅めに行くとL字のカウンターには私のみ女性なんてことも多々ある。味噌と醤油の2種類の味にチャーシューをつけるかどうかの4択で、私はいつも醤油チャーシューメン。少し甘めの醤油ベースに絡まった細ストレート麺と極薄切りのチャーシューを一緒に口に頬張ると、ああ京都のお味だぁと幸せになれる。

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夜はほとんど出歩けず、急きょ集まってくれた関西在住の友人たちとランチをしたのは田中里の前にあるベルクール・グループが擁する「ラ・パール・デュー」さん。ベルクール時代はよく使わせてもらっていたが、30周年で心機一転店名を変えられてからは初めて。今のフレンチの流れを汲みつつ、野菜の使い方が京都らしく巧みで、大阪、神戸より来てくれた友人たちも喜んで頂ける内容。ちなみにランチコースは突き出し、スープ、サラダ、温菜、メイン、デザート、小菓子に食後の飲み物がついて4,000円(税別)。画像は63種類の野菜・花・野草のサラダ。お野菜だけでなく数種類の魚も葉の中に隠れている。 

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数少なかった文化的な活動は、母の代理で行かせて頂いた顔見世。中学時代から師走は顔見世を観に行く恵まれた環境で育ったが、今回はいつもの祇園の南座が耐震工事中につき、岡崎にあるロームシアターでの特別公演。中村橋之助さんが芝翫という大名を継がれ、それに伴う3人の息子さんたちの橋之助、福之助、歌之助の襲名披露も兼ねている。人生の大先輩たちのお供で観劇すると、先代の技や芸と比べて教えてもらえるのが面白くて、未だまだその域には達せられないが、かつてうたた寝していた長唄が今では目を爛々と輝かせて魅入るものになってきた。身体の軸がきちんと定まっていて、キレのある動き、華をもっている役者さんには自然と目がいくし、間あいの大切さがようやくわかりかけてきたのは歳と経験を重ねて来れたからだろう。よくわからないまま歌舞伎を観だして、年数だけは経つが、その時わからなくとも後になってじっくり味わえるようになるから、理由はわからないけど面白いと感じられる出来事や趣味に出会えるなら程よく追い続けるのも良いもの。

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寒さにはめっぽう強いと自負しているが、今回は久しぶりに京都の寒さにやられる。どのくらいかというと、お風呂に入った瞬間にかじかんだつま先がじんじんと痺れるほど。1時間ほどかけてお風呂で温めた筈の体は、部屋に戻った瞬間から末端がぐぅんと冷えて青白くなり、ミノムシのようにお布団にくるまっても3時まで眠れず。何度も言うようだが、寒さには耐性がある私でも負けるくらい凍て付くのだから、八王子から嫁いできた義妹に至っては使いすてカイロを5個を身体のあちこちに貼り付け、フリースを着てもなお寒いというし、天井が高く、襖も無いため空調は効かない居間で食事する際は家族一人につき1個の電気ストーブを付けるがいつ建てたか解らない町家での暮らし(笑)。ほんまにアホほど寒くて、風邪で声が出なくなったので戦力外通知を受けて、急きょ東京に送り返されたという顛末。

体調管理の甘さは我ながら悔やまれるが、案の定初雪にも立ち会えたし、ある程度は誰かの役にも立てたので今はそれで満足。

 

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森見登美彦さんや万城目学さんのファンならずとも有名な鴨川のデルタ。今出川の橋が工事中で、いつもの風情は失われている。

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鴨川のどこか。下鴨の家裁辺りで、トンビとカラスの空中バトルがえんえんと続いていて、じいっと見ていたら20分ほど経過していた。