300と数十日の食卓

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52冊目『二菜弁当』から最終回は天津飯弁当

[52-8]『二菜弁当』から最終回は天津飯弁当(p.36~)

オカズデザイン著、 成美堂出版発行、 デザイン 漆原悠一、栗田茉奈、梅崎彩世、撮影 加藤新作、スタイリング 中里真理子、 企画・編集 君島久美、2018年2月20日初版発行 

気温も湿度が高くて、ちょっと動いただけでも汗がじんわり滲む木曜は中華風お弁当を。

調理時間:小一時間(前日にセロリを漬けて、干し椎茸は水につけているものとして)

主な材料:[セロリの甘酢漬け]  食べやすい大きさに切ったセロリ、砂糖、酒、塩、米酢、レモンの絞り汁、昆布、小口切にした赤唐辛子など。 [天津飯] 薄切りにしたゆでたけのこ、卵、みじん切りにした長ネギ、戻した干し椎茸、酒、干し椎茸の戻し汁、オイスターソース、米酢、砂糖、ごま油、水溶き片栗粉など。

調理の流れ:[セロリの甘酢漬け] セロリを塩もみして、しばらく置き、水気を切る。調味料を沸騰させ、粗熱が取れたら酢類を入れる。ホーローや小瓶に液を入れ、セロリ、昆布、赤唐辛子を入れ一晩以上おく。 [天津飯] 戻した干し椎茸は薄切りにする。卵をボウルに入れてほぐす。フライパンを火にかけ、ごま油を熱し、長ネギとたけのこ、干し椎茸を炒め、酒、塩胡椒を加えてざっと炒め、器に取り出し、粗熱が取れたら卵に加え混ぜる。フライパンをさっとぬぐい、サラダ油を入れて熱し卵液を流し入れざあっと一混ぜしたのちは全体にうっすらと火が通るまでしばらく放置してから、改めてざっくり混ぜ合わせて丸皿に取り出す。小鍋に調味料を加えて一煮立ちさせたら、水溶き片栗粉を加え混ぜる。

出来上がった料理:「忙しい朝でも作りやすい二菜」より、手間がかかっていそうに見えて、意外にそうでもない天津飯入りのお弁当を再現した。

干し椎茸の甘みと旨みによって筍のえぐみがとっても美味しい。大人になったからこそ味わえる季節の素材の素晴らしさをしみじみ感じるためにも、春から初夏の頃に出回っている新鮮な筍を使ってぜひ作ってみて欲しい。時間的にさっと作れる分、細心の注意を払うべきは卵の火加減。オムレツは卵を焼くだけなんだから簡単!などと侮らない人ならわかると思うが、程よい柔らかさを残して卵料理を仕上げるのは思いの外難しい。今回この天津飯を作るにあたって私はフランスのオムレツ式、つまり半熟の2〜3歩手前で折りたたみ始め、表面は火が入っているが中はゆるゆるっと柔らかい状態で仕上げた。

セロリの甘酢漬けはとろっと甘みのある主菜を食べながら、口にするとシャキシャキ感と、ほんのりした香りにさっぱりさせる酸味が絶妙で、お弁当を食べる速度が上がるか、はたまた、じっくり味わいたくてスプーンを進めるのがゆっくりになるか、作って食べた人だけにわかる。(セロリと共に野菜室にちょろっとずつ残っていた野菜も塩もみして一緒にピクルスにした)

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お弁当の蓋を開けて、茶色のとろりとした餡がかかった天津飯が出てきたら、うわっ!という驚きと、口にした時の喜びとで記憶に残りそうな一品。

 

まとめに代えて:「バランス抜群の定番」、「忙しい朝も作りやすい」、「野菜の滋味を楽しむ」、「がんばる日のごちそう」、「ひと味違うアジアな」、「みんなが好きな洋食の」いずれも、二菜で美味しく満足できるお弁当レシピが満載されている。ご本人たちが作られた料理を何度か食したことがあるが、お野菜の持ち味を生かした料理が抜群に美味しくて、こころばかりか体まで本当に元気になれる。同じ料理人の観点からすると、okazさんには敵わないなぁといつもうな垂れるが(笑)。

本書は20代の働いている女性向けに記されたそうだが、料理経験を積んだもう少し上の年齢層ならより活用できる一冊。焼きそばやちらし寿司なんて、もう幾度作ったかわからないほどいろんな人に差し入れては喜ばれている。大切な人のために作って、喜んでもらえることが料理を上達させる近道の一つ。極端な話、台所で作ってすぐに食卓に出すとなるとごまかしが効かないが、お弁当なら自分の好きなように時間をかけられるので、ちょっとだけ気楽に料理を作って食べてもらえるのでは。

二菜だからちょっと見た目は地味だけれど、失敗がないようなテクニックとともにしみじみと美味しいお弁当がいっぱい。

 

 

「何か食べもので好き嫌いはありますか?」は会話のネタで時々使うが、面白いのは「食べられないものは特に無いです」と答えられた後に、例えば「パクチーも?」と具体例をあげると、「あ!苦手です」ときて、そういえばアレもコレも食べられないと数珠繋ぎで出てくること。あれれ。嫌いなものは無かったのでは?と頭の中に疑問符が飛び交うが、きっとその人にとってそれらの食材そのものは存在しないものなんだろうなぁ。食べられないから、食べものとして捉えられず、好き嫌いは無いに行き着くのではないかと邪推するが、食事にそこまで興味がないんだろうという説もあり、なかなか面白い。

現時点で世界で一番売れたアニメ主題歌"Can You Feel the Love Tonight" Elton Johnを久しぶりに聴く。子どもとのプライヴェートな時間を優先するために引退を宣言した彼のファイナルワールドツアーは3年間かけて300公演が予定されている。どこかの公演に行ければ良いなぁという野望を抱いている。


Elton John - Can You Feel the Love Tonight (From "The Lion King"/Official Video)

<ごはん日記>