300と数十日の食卓

食べること,本を読むこと,音楽をめぐる時間

54冊目『和えるおかず』から最終回はラム肉のスパイス和え

[54-7]『和えるおかず』から最終回はラム肉のスパイス和え(p.36~)

坂田阿希子著、 株)世界文化社発行、 ブックデザイン 縄田智子 L'espace、撮影 新居明子、スタイリング 佐々木カナコ、取材・構成 新田草子、編集 北野智子 2017年7月25日初版発行 

すっかり空が高くなって、日が暮れるのが早くなって、通り過ぎる家に灯るあかりのやさしさに寂しさを感じたり、逆に家族の温もりを感じたりする季節。

調理時間:10分ほど

主な材料:紹興酒、ごま油、しょうゆを揉み込んだ焼肉用ラムもも肉、薄切りにしたにんにく、赤唐辛子、クミンシード、フェンネルシード、コリアンダーシード、ローリエ、八角、しょうゆ、黒酢、塩、ざく切りにした香菜など 

料理の流れ:油を注いだフライパンにニンニクを入れ、弱火でじっくりと香りが立つまで火が入ったら、全てのホールスパイスを加え、ニンニクがきつね色になるまでじんわり炒める。スパイスの香りが開いたら、スパイスと油とを分ける。フライパンに先ほどの油少々を注ぎ、ラム肉をこんがり焼いて取り出す。残りの油、スパイス、調味料、香菜で和える。

出来上がった料理:「肉の"和え"おかず」より、大好物のラム肉を使ったエスニック調の料理を再現した。

インド料理に使うスパイスはほとんど常備しているので、私の場合は問題無かったが、フェンネルシード、八角あたりは買い足す必要がある方もいらっしゃるかもしれない。フェンネルシードは魚料理やズッキーニとの炒め物にも使えるし、八角は豚バラ肉の煮込みや中華料理での香りづけに大活躍するので、これを機に揃えるのもオススメする。無くともそれなりの味にはなるだろうが、フェンネルシードの独特の甘みや八角特有の香りはこの一皿を数段美味しく、そしてあとを引く味にさせてくれる。

暑い時期に何度ともなく作ってビールとともにご機嫌な時間を作ってくれたレシピ。神田にあるお気に入りの中華料理店で食べるラム肉はそれはもう絶品だが、おうちで自分が作ったスパイス和えは愛おしさ、気楽さも加わって、一口目は思わずむぅをおーと唸るほどに美味しい。二口目以降は口中に広まる調和のとれたスパイスの香りとラム肉の旨み、香菜のクセをぷわぁっと楽しみ、ビールを飲んで笑うことをただただ繰り返すのみ。

ラム肉や香菜は好き嫌いがあるので、万人受けする料理ではないが、お好きならぜひ作って欲しい。こうして文章を書いているだけで、味を思い出し、食欲をそそられるほどにお気に入り。 

f:id:mutsuki:201810rs

まとめに代えて:期せずして、長期間に渡ってお届けすることになった坂田さんの『和えるおかず』だが、今年に入ってから一番よく使った料理本である。肉、魚、野菜という章立てで、おかか等を使ったシンプルな和えもの、和え麺も少数だが載っているのは嬉しいところ。最近は自分のレシピを考えることが多くなったり、レシピや味が合う料理研究家がほぼ固定されたこともあるが、坂田さんの場合、シンプルなものも、それなりに材料を揃えて下準備が必要なものも、どちらもバランスよく掲載されており、何を作ってもほぼ間違いなくおいしく作れる。ここまで再現性の高いレシピをよく作れるなぁと感心させられる。表参道近辺でお料理教室も主催されているので、機会がある方はまず参加されてみては。料理をされるご本人の手元を見て、お話を聞き、実際に作られたものを食べるのは料理上手になる近道のひとつ。 

 

先月末はいつものように前日に思いついてふらっと松本に旅行。大好きなきのこをお店の方に感心されるほどモリモリ食べてきたが、そういえば今年の夏は枝豆に溺れた。新潟の黒崎茶豆、山形のだだちゃ豆や、長野、秋田、青森、京都の黒枝豆と1日1食は枝豆一袋を食べていたくらい。茹でたての熱々も美味しいが、冷めた頃が豆の持ち味がくっきりして好きである。茹で上がったものを塩水に漬けるのもお酒にピッタリでとてつもなく美味しい。食品売り場ではきのこ勢が圧倒的に優位になってきたが、産地や品種によっては今が美味しいものもあって、枝豆ハンターとしてはまだ目が離せない。

先週は結成19年で遂に武道館に立つ京都のバンドROTTENGRAFFTYの勇姿をこころと身体に刻むために久しぶりのライブ。今をきらめく音ではないが、こういう音作りが好きな人にとっては堪らないし、何より観客みんなの愛に包まれた空間と時間に打たれ、気がつくとほろほろと涙流れる。あぁやっぱりライヴはものすごい楽しくて、力をもらえるもんだと再認識できたよい夜だった。

連休続き、気温も安定しないので、ずぅんと疲れが出る頃だが、みなさまそれぞれにとって素敵な休日を。1週間おつかれさまでした。

 


金色グラフティー / ROTTENGRAFFTY

<ごはん日記>