300と数十日の食卓

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32冊目『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』から最終回はじゃがいもとわかめのバター煮

[32-7]『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』より最終回はじゃがいもとわかめのバター煮(p. 37~)

『婦人之友』『明日の友』読者のみなさん、本谷恵津子、横山宗一、小関泰著、婦人之友社発行、 料理 仙台友の会、 撮影 佐藤則子、鈴木正美、松田哲郎、本社写真部、 デザイン 塚田佳奈、スタイリング 駒井京子、 2017年3月11日初版発行

やらなきゃいけないことを済ませるとうたた寝を繰り返して過ぎて行く火曜は素朴な煮込み料理を。

調理時間:30分ほど

主な材料:塩蔵わかめ、じゃがいも、砂糖、しょう油、みりん、酒、バター

調理の流れ:大きめに切ったじゃがいもを鍋に入れ、ひたひたに水を張り火にかける。沸騰したらバター以外の調味料を加え、煮汁が1/3になるまで弱火で煮込む。じゃがいもが柔らかくなっていたら、塩抜き後にざく切りにしたわかめとバターを入れてさっと火を通す。

出来上がった料理:「みんなのわかめレシピ」よりしょう油風味のじゃがいも煮に、わかめを添えて、香りや素材そのものの味をシンプルに味わう料理を再現した。

新じゃがを使うと皮付きのままが美味しいし、皮を剥く手間も無く、包丁の出番はじゃがいもとわかめを切ることのみ。あとはお鍋でことこと煮るだけという工程で、じゃがいものほっくりした甘味とわかめの磯の香りがふわぁっと漂うやさしい味の煮込み料理が出来上がる。最後に加えるバターで全体がまろやかになり、コクも出て、お子さんから年配の方まで好まれる味が出来上がる。特別な材料は要らず、和風だけれど洋風料理とも喧嘩しない味なので、献立作りに迷ったときに役立つレシピ。

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こういう煮物を自分のものに出来れば、自分も、ともに食卓を囲む人にとっても嬉し。

まとめに代えて:本書は2011年3月11日に発生した東日本大震災の支援を通じて、婦人之友社、全国と物会、自由学園の3つの団体が出会った石巻市北上町十三浜のくらしから生まれた。わかめの養殖から復興を目指す人々のために、婦人之友社が流通に関わることで全国の家庭に浜のわかめ類が届けられるようになり、もっとレシピを知りたいという声が高まったことを受けて出来上がった。募集して全国から集まったレシピに加えて、十三浜の家庭の味、プロによるものが収録されている。

「海のしごと 浜のくらし」では、こんぶやわかめの養殖方法から、塩蔵わかめが出来上がるまでの工程に加え、浜の母さんのわかめ&茎わかめ料理や昆布料理15品が紹介されている。「わかめと昆布 みんなのレシピ」では塩蔵わかめ、昆布の基本的な扱い方をはじめ、「わかめレシピ」では、どっさりわかめのごま油炒め、玉ねぎわかめの帆立ドレッシング、わかめのポークチャップなど18品、「茎わかめレシピ」では、茎わかめ入りクスクス、茎わかめとカキのアヒージョなど6品、「昆布レシピ」では昆布とトマトの炊き込みごはん、昆布とにしんのヨーグルトサラダなど19品。「料理のプロのレシピ」白身魚のわかめあんかけ、昆布巻き餃子、昆布のラザニア風など11品。「若い世代のレシピ」石巻北高等学校よりわかめとエビのパイグラタンなど3品、自由学園よりわかめクラッカーなどの4品が紹介されている。

レシピの他にも三陸の海についての片山教授(東邦大学大学院農学研究科)の文章や、海藻についてのQ&Aに山口准教授(東北大学大学院農学研究科)が関わっておられたりと、現地のことや、わかめ、昆布の知識を学びやすくなっている。

栄養価のみならず、風味豊かな日本のわかめや昆布を使った幅広い料理の本で、本書を通じて浜の生産物を買ってみたい、食べてみたいという行動がさらに広がっていくことを願う。おいしいものを作って、喜んで食べてもらいたいという作り手の思いと、そうした思いや豊かな自然によって育まれたものを口にすることで食べる側に生まれる「何か」が、お互い繋がって、よき方向に進んでいければなぁなど諸々考えさせられた一冊。

 

有元葉子先生、小林カツ代先生の著作は2冊ずつ取り上げたが、未だ再現していなかった有名料理研究家の本を明日から紹介する。

<ごはん日記>