300と数十日の食卓

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38冊目『あえ麺100』、『らくつまみ100』から最終回はキムチゆずこしょうなど

[38-7]『あえ麺100』、『らくつまみ100』より最終回はキムチゆずこしょう(あえ麺〜p.12~)、ちくわとキムチの炒めそうめん(つまみp.66~)

1:『あえ麺100』堤人美、夏井景子著、 株)主婦と生活社発行、ブックデザイン 小林沙織、撮影 東木村拓、スタイリング 大畑純子、編集 足立昭子、 2017年7月21日初版発行

2:『らくつまみ100』ワタナベマキ著、株)主婦と生活社発行、アートディレクション・デザイン 柳田尚美、撮影 木村拓、スタイリング 大畑純子編集 足立昭子、 2017年6月2日初版発行 

 

放熱後の朝は心地よくて、でも外に出ると蒸しっと暑い水曜は麺の量を半分にして2冊のレシピを食べ比べる。

調理時間:あえ麺は5分以内。炒め麺は10分以内。

主な材料:[あえ麺] 白菜キムチ、醤油、酢、柚子胡椒、そうめん、小口切り万能ネギなど  [炒め麺] ちくわ、白菜キムチ、万能ネギ、白すりごま、そうめん、酒、醤油など ※いずれもそうめんは茹でて冷水で締め、水気をきる。

調理の流れ:[あえ麺] 器に調味料を入れて混ぜ合わせてからキムチを入れて絡め、そうめんを和えネギを散らせる。 [炒め麺] ちくわは7mm幅の斜め切り。白菜キムチは2cm幅に、万能ネギも斜め薄切りにする。ごま油を熱したフライパンでちくわとキムチを炒め、焼き色がついたら酒を注ぎ入れさっと火を入れたらそうめん、醤油を加え炒める。万能ネギ、白ごまを入れざっと混ぜる。

出来上がった料理:「思い立ったらすぐ!最速皿あえ麺」からお皿の上で全て混ぜるのでボウルなど調理器具を洗わずに済むし、麺を茹でて冷水で締めたらすぐに出来上がるあえ麺を再現した。キムチの甘みのある辛さにゆずこしょうのシャープな辛さを重ねると、しゅっとすっきりした味わいになる。

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レシピ外の炒りごまをぱらぱらとかける。使った麺は揖保乃糸。

最終回ということで『らくつまみ100』より似たような材料のそうめんレシピを再現して比較してみる。「つまみ麺とごはん」よりキムチにちくわを加えて炒める温麺は、ネギやちくわを切るのでまな板、包丁にフライパンが必要となるが、炒めることでキムチにコクが増し、ちくわから程よい旨味が出て来る。一手間かかるが美味しいなぁ。熱を加えるとキムチの乳酸菌は失われてしまうものの最近は生食よりも、炒めたり鍋料理など加熱して食すことが多いので温麺の方がわたしとっては食べやすかった。

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築地で美味しい海苔を買ったのでレシピ外でふりかけた。使った麺は半田麺。

まとめに代えて:主婦と生活社の人気100レシピシリーズより2冊の再現してきた。まず『あえ麺100』は手に入りやすく茹で時間の短いそうめん、冷凍うどん、そば、中華麺の4種の麺にターゲットを絞り、具材をのせて和えるほぼ2ステップで出来上がるレシピが掲載されている。麺を茹でている間に材料をお皿の上に混ぜ置いたり、準備しておけて洗い物もほぼ出ない「第1章 最速皿あえ麺」では卵、食べるラー油、青のりあえ麺、ゆかり、三つ葉、オリーブ油あえ麺など14個のレシピが紹介されている。包丁、まな板は必要となる「第2章 すぐできあえ麺」ではちくわとにらの梅オイスターソースあえ麺、しば漬け、クリームチーズ、水菜あえ麺など22種。具材をたっぷり麺の上にのせて混ぜながら食べる「第3章 ボリュームたっぷり!のっけあえ麺」ではカリッとベーコンとトマトサルサあえ麺、しめ鯖、さらし玉ねぎ、レモンあえ麺などの他カレー風味や台湾風の味付けも含んだ22個。具材をフライパンで炒めて具材を和える「第4章 ささっと手早く!炒めあえ麺」ではシンプルジャージャー麺、炒め長ねぎのクリームソースあえ麺などよりヴァラエティに飛んだ20種。とろみのあるトッピングやたれを使う「第5章 とろりとおいしい!かけあえ麺」ではなめこ入りにんにくみそそぼろあえ麺、らっきょう入りとろろあえ麺など8種類。ストックできるソースの作り方とその展開を紹介する「第6章 ソースと素でパパッとあえ麺」では香味じゃこソースなど各素につき3つの展開レシピなどが書かれている。

栄養学を受講した時に、先生が今の若い子たちはそうめんの茹で方が先ずわかっていない。沸騰したお湯の中にそうめんを入れるという、この大切な沸騰というプロセスを飛ばして、生煮えのお湯で茹でてしまうので失敗してしまうと話されたことが思い出される。故にだろうか、一番目立つ表紙カバーの見返しには乾麺(そうめん)の茹で方の4プロセスが写真付きで丁寧に記されている。

前半は家にありがちな素材でいかに簡単に手早く出来るかに焦点を当てたレシピが多いため、ある程度料理に慣れている人には物足りないかもしれない。後半はこの組み合わせだとどんな味になるのだろう?と興味をかきたてられるものや、ご飯に合わせても美味しそうなものが増えてくるので中級者もご安心を。

今回いくつかのレシピを再現しているうちに、そうめんに関しては普通にツユにつけて食べる方が好みであり、麺料理を作って食べるのであればうどんやスパゲティ、中華麺が好みだと気がついたため、途中からそうめんのレシピを避けるようになってしまった(笑)。最終回で復活させたが片方の炒め麺は太めの半田麺を選んでいる。

次に『らくつまみ100』は①3種類以内の材料で手早く、さっと作れるもの。②そのものの味を楽しむために加えすぎず、塩もみやゆでて野菜をたっぷり。③味や香りがぐっと華やかになるハーブやスパイスを効かせる。④栄養価の高い保存食も有効活用する。という4つの主軸をもとに「のせる、はさむ」、「あえる」、「ゆでる、焼く」、「炒め、揚げ」という調理方法でレシピがまとめられている。そのほかには献立の組み立て方例が3通り、〆の麺類とごはんのレシピが10種類掲載されている。

まず「のせるだけ、はさむだけ」では、かまぼこののりわさびのせ、油揚げのツナねぎのせなど9つのレシピ。「あえるだけ」では、にんじんのみそ松の実あえ、焼き鯖とフェンネルのマリネなど21種類。「ゆでるだけ、焼くだけ」では、ゆでカジキの紫玉ねぎドレッシング、手羽中のオイスターソース焼きなど16個。「さっと炒め、さっと揚げ」では、卵とネギのオイスター炒め、たらのフリットレモンソースなど20種のレシピ。

簡単にお家ご飯を作りたいという趣旨の『あえ麺』と比べると、カジュアルなホームパーティーも意識したおもてなし感があるレシピが多い。おつまみとはお酒をより楽しく、美味しく飲むための添えの料理なのでそういう流れになるのは自然なことか。少しずつでも3種類以上のおつまみを食べながら飲むのがほぼ日常の生活を送っているので使えるレシピが多い。(実際にお酒を嗜む人に数品食べてもらっても確かな評価を得た)

2冊ともレシピはほぼ全て2人分。どちらも庶民にとっては高嶺の花なカニ缶を使ったレシピが一つ以上出てくるのは謎。

酒飲みの好みでついおつまみに力が入ったが、「あえ麺」はそうめんなど簡単に扱える素材を使い、楽に美味しく料理を作るために、どこまで材料と手順をそぎ落としていくかについてや、出来上がった料理に物足りなさを感じた時に何を加えれば良いだろう?と思考力を鍛えさせてくれた。材料を一つ削ったり、プロセスを一つ省くことで作り手(食べる側)はどれだけの恩恵に預かれるのか。逆に、一つ増やすだけで美味しく出来るのだろうか。

オススメのレシピは『あえ麺』では、かんたんルーロー麺(p.44~)、いか、クレソン、わさびじょうゆ(p.22~)。『らくつまみ』は、ゆで鶏のアンチョビアボカドだれ(p.37~)、まいたけとドライトマトのガーリック炒め(p.52~)、ゆでささみのねぎ実山椒だれ(p.39~)。blogでは未紹介だがスナップえんどうの黒ごまナムル(p.8~)も、手軽で美味。

 

夏の間に、軽妙な語り口で読みやすい作品を読み終えた。駄菓子屋と文庫専門の古書店を兼ねるお店を舞台にした『だがしょ屋ペーパーバック物語』竹内真著、だいわ文庫刊だ。著者はカレー好きにはおすすめの大作『カレーライフ』や『じーさん武勇伝』などで有名な竹内真さん。脚本家志望の主人公と舞台女優を夢見る彼女が、だがしょ屋店主のいきな江戸っ子ヤマトさんと出会い、それからの日々を描いた小説で、本、駄菓子、アルコールに舞台、映画のことまでさりげないが色々な要素が詰まっている。じんわりあたたかくなる読後感が竹内さんらしい。

「ほんの僅かな希望の閃きに導かれ、案外、多くのことが分かるかもしれぬ」(p.248) 

だがしょ屋ペーパーバック物語 (だいわ文庫)

だがしょ屋ペーパーバック物語 (だいわ文庫)

 

 <ごはん日記>