300と数十日の食卓

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53冊目『とびっきりの、どんぶり』から最終回はストロガノフ丼

[53-6]『とびっきりの、どんぶり』から最終回はストロガノフ丼(p.19, 21)

小林ケンタロウ著、 文化出版局発行、 デザイン 小野明子、アートディレクション 白石良一、撮影 澤井秀夫、スタイリング 中安章子、料理アシスタント 下条美緒、板橋喜代美、片平真紀、2002年6月23日初版発行 2008年8月21日第14版

久しぶりに気温が上がったものの、程よく吹く風が心地よくて暑っ!というよりも、初夏らしい火曜は乳製品をたっぷり使ったどんぶりを。

調理時間:10分ほど

主な材料:そぎ切りにした豚ヒレ肉、手でほぐしたしめじ、舞茸、手でさいたエリンギ、みじん切りニンニク、薄力粉、バター、オリーブオイル、白ワイン、生クリーム、牛乳、粒マスタード、刻んだパセリ、あつあつのご飯など 

調理の流れ:(かなりの自己流アレンジ入り)ヒレ肉に塩コショウをしたのち、薄力粉をまぶす。フライパンにバターを入れて火にかけ、ぐるぐると動かしながら茶色く焦げる手前でオリーブオイルを加え、豚肉を並べて強火で両面に焼き色をつける。隙間をあけて、ニンニクを入れ香りがたったらキノコ類を入れざっと混ぜ合わせる。全体に油が馴染んだら、キノコの上に豚肉をのせてしんなりするまで焼く。白ワインをふりかけ、アルコール分が飛んだら、生クリーム、牛乳を注ぎ、とろりとするまでさっと加熱する。粒マスタードを加えたら火を止め、味見をしてから、器に盛ったあつあつのごはんの上にかけパセリ、胡椒をふる。

出来上がった料理:「ボリュームどんぶり」より、ビーフではなく豚ヒレ肉を使ったストロガノフ丼を再現した。

本書が出版された2002年では、ストロガノフにはご飯よりもパンが似合う印象だったようだが、ケンタロウさんレシピの普及もあってか、2018年ではご飯にストロガノフはほぼ定番で見受けられるようになった。当時は斬新かつ、こんなに手軽に小洒落た一品が家庭で作れるなんて!となっていただろう。今や珍しい料理感は薄れたものの、バター、生クリーム、牛乳の乳製品御三家にキノコのうま味や香りを引き出し、口にした瞬間ににまぁっとなるほど濃厚で美味しい料理を作ることができる。

ヒレ肉はパサつきがちだが、焼く前に薄力粉をはたき、火を入れすぎないようほんの少しだけ気をつければ、柔らかく、じんわり豚肉の美味しさそのものを味わえる。生クリームも長い時間をかけて煮るとせっかくの風味が飛んでしまうので、ささっと煮詰めてしまおう。

全体を決めるのは粒マスタードの酸味(前面には出ないので隠し味)と、そこはかとない香り。キノコは3種類でなくとも良いし、豚肉もヒレでなくロース薄切りでも代用できるが、粒マスタードだけは欠かさずに作ろう。パセリの香りと緑も大切。

レシピを見ただけで、女性にとっては重すぎると感じられるかもしれないが、豚ヒレ肉のあっさりした肉感が、ソースにちょうど良いバランスで、実際にご飯と合わせて食べてみると、うわうわ。これ、美味しい!となること間違いなしの丼。この頑張りすぎていない、家庭ならではのお味は、きっと作った自分以上に男性やお子さんに受けるだろうなぁ。

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残ったら、翌日は白ワインか牛乳少々を加えてのばし、太めのパスタに合わせても美味しい。

まとめに代えて:初版が2002年。今から10年前の2008年時点で14刷まで伸びたケンタロウさんのベストセラーの一つが本書。

再現した目玉焼き丼、ドカンとカツ丼、野菜たっぷり炒め丼を含む「とっておきのどんぶり」、ストロガノフ丼、豚キムチ丼が取り上げられている「ボリュームどんぶり」、「いつでも人気の基本どんぶり」、「魚がうまいどんぶり」、なすとセロリのひき肉カレー丼がある「あっと言う間の丼」、「少どんぶり」、「どんぶりのお友だち〜小鉢編」、「同〜汁編」という章立て。

365日3食の献立をあれこれ考えるのは、家族のために大切なのは十分にわかった上で、もっと気楽におおらかに作っていいんじゃない?手抜きじゃなくて、楽しく、美味しく料理を作ろうよ!と提唱し出したのは小林カツ代先生やその息子のケンタロウさんが始めだったような気がする。

レシピに付随するケンタロウさんの文章一つ一つが、料理愛に満ちていて、読んでいるだけでお腹が空いてくる。今となっては最先端ではないが、だからこそ再評価されるべきではないかなぁ。発刊当時と比べ、食材の質も料理理論も随分異なったので、アレンジをしたほうが良いレシピもあるが、そうしたところで、ケンタロウさんなら、いいんじゃないのと微笑んでくれそう。

 

主に仕事の関係もあるが、更新が週に一回程度に落ちているのは、今回から一品につき何度か試作した後にblogで取り上げるものを決めているから。せっかく料理本に載せるまでに考えられたレシピなのだから、一つ一つにもっと時間をかけて作ってみようという新しい試み。もう少し料理の腕が安定したら元のペースに戻すので、もうしばらくおつきあいください。

記事にはしなかったが干物、大根おろしに春菊などを混ぜごま油で風味づけした「干物おろし丼」、常備している乾物などで手軽に作れる「のり丼」、鮭の缶詰に赤味噌とたっぷりのわさびを効かせた「鮭わさびみそ丼」なぞは手巻き寿司の具材に加えても受けそうな美味しさだった。

 

昨日早朝、大阪北部が震源地の地震には驚かされた。速報が流れてすぐに末弟にlineすると大丈夫だというので安心していたら、各所より続々と問い合わせがあり、実家に電話するも繋がらず。そうなると途端に心配になるもので、迷惑は覚悟の上で実家近くに住む義妹(長男の嫁)にlineしてようやく無事が確認できた。すぐに京都に戻るという考えもよぎったが、新幹線は止まっているし、ここで動けば逆に混乱を招くだけだなぁと思い至り、今は東京で過ごしている。

もうしばらく余震が続くようなので、飲料水、食べ物その他必要なもの(モバイル機器の充電器、手持ちは全てフル充電)はなるたけ備えて、パニックにならないようお過ごしください。いつもしっかりと踏みしめている地面がゆらゆらと縦や横に揺れるのは本当に怖いものだけれど。

下の画像は本日仕事で訪れた神楽坂に居たコボちゃん像。この愛されている感はすごい。

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<ごはん日記>