300と数十日の食卓

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55冊目『実用の料理 ごはん』から最終回は豚とひよこ豆のヨーグルト炊き込みごはん

[55-6]『実用の料理 ごはん』から最終回は豚とひよこ豆のヨーグルト炊き込みごはん(p.39)

高山なおみ著、 株)京阪神エルマガジン社発行、 アートディレクション・デザイン 有山達也、デザイン 中本千春、撮影 齋藤圭吾、スタイリング 高橋みどり、イラスト 牧野伊三夫、編集 赤澤かおり、村瀬彩子、稲盛有紀子 2015年12月1日初版発行 

一年に一度だけ、家族で朝からお酒を飲むことを許されるお正月で身につけたお肉が重い…でも、自分で作ったごはんが今年もとても美味しい…で久しぶりの更新。

調理時間:1時間ほど(お米の浸水時間も含め)

主な材料:白米、一口大に切った豚こま切れ肉、すりおろしたにんにく、塩胡椒、オリーブオイル、チキンスープの素(顆粒状があればベスト)、プレーンヨーグルト、クミンシード、バター、みじん切りにした長ネギ、水気をよく切ったひよこ豆の水煮、ディル、レモンなど 

調理の流れ:研いだ米は調味料と水をよく混ぜ浸水させる。その間に豚肉に調味料を揉み込み、炊飯器のスイッチを入れるまでマリネしておく。フライパンに豚肉を広げて両面に焼き色がつくよう強火でさっと焼く。バター、長ネギ、ひよこ豆を加え混ぜながら炒める。炊飯釜の中をくるりとひと混ぜてから、フライパンの中身をのせて炊飯する。蒸らし終わったら、塩胡椒をふりかけて味見をし、ディル、レモンを添える。

出来上がった料理:「第2章 炊き込みごはん」の炊き込みごはんいろいろより、こんな組み合わせあるんだ?でもきっと美味しいに違いないと予感させるいかにも高山さんらしいレシピを再現した。クミンシードは油で炒めなくとも良いの?とか、チキンスープで溶いたヨーグルトで炊くご飯って一体全体どんなお味なの?とドキドキワクワクしながら料理をする楽しさの一つよね、と思い出させてくれる。

豚肉、にんにく、レモンを切り、ディルを刻むくらいしか包丁は使わない代わりに、フライパンを使うので洗い物がちょっと増えるくらいで、女性には間違いなく受ける炊き込みごはんを作ることができる。

乳製品を使っていることは確かだが、まさかそれがヨーグルトだとは作った本人でもわからない爽やかな、でもコクのあるお味。ひよこ豆のホクホクした食感と、豚肉から出た脂の旨み、クミンシード特有のクセがチキンスープ、バター、ヨーグルトで程よくまとまり、最後に絞るレモンと香り高いディルでさらに味が深まり、香り高い一品となる。冷めてもそれなりに美味しいが、やはり炊き立ての香りと乳製品特有の風味を思い存分楽しむのが一番。

ディルさえ手に入れば、茹でひよこ豆のストックは冷凍庫にあるし気軽に作れるので、何度も作っているお気に入りの炊き込みごはん。ディルがない場合は、少量のミントで代用できそうだが、ヨーグルトとディルの組み合わせは魚・肉料理問わず、素晴らしく美味しいので、出来れば一度は味わってもらいたい。

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単体でも美味しいけれど、トマトベースのソースやサラサラのカレーなどとあわせても美味で、季節を問わず食欲を駆り立てるご飯。 

まとめに代えて:有山さんデザイン、斎藤さん撮影、高橋みどりさんスタイリングという料理本関係者にとっては垂涎のメンバーで世に送り出された高山なおみさんの「ごはん」に関する本。炊きたてを楽しむためのご飯のおとも、炊き込みごはん、おこわ、ちらしずし、どんぶり、玄米、雑炊、汁かけごはんやおかゆまでその数140のレシピが掲載されている。ロシア、ベトナムなどのアジア風も取り混ぜながら、日本で長らく愛されてきたごはんが高山さん流にシンプルな調味料と工程で記されている。どれも美味しそうで、いや実際美味しくて、今回紹介した以外にも愛用しているレシピが多数ある。美味しいごはんと実にあうがっつりした肉料理もあるので男性にもウケるし、季節の野菜の味を噛み締められる炊き込みごはんなどは年配の方にも人気が高い。何より日本に住まう者にとってお米をいつもと違う料理法で、美味しく食べられるレシピ集って、とてもありがたいもの。

例えばおかゆなぞはきほんの基本、しろがゆにべっこうあんという最強の組み合わせとアジア圏に旅行すると馴染み深い鶏がゆのあわせて2つのみが掲載されている。しろがゆを美味しく作るコツさえ掴めればアレンジは自在だし、肉を使う煮込み系のレシピの2種類さえ覚えられれば、お店じゃあるまいし家庭ではそれで十分という料理と生活に関する高山さんのスタンスが明快に現れている。こういった彼女の哲学に共感できる人にとってオススメの一冊。

 

10歳未満から料理が好きだったが、原点を辿ると母方の祖母が歌うように楽しく美味しく料理を作る人で、食べるって、人に食べてもらえるってこんなにしあわせなことなのかと子どもながらにぼんやり感じていたこと。小学生でもわかるのだから、当然ながら周りの大人にも評判の料理上手で、母自身も自慢の祖母だったが、最愛の夫(私の祖父)を失ってからはめっきり料理をしなくなり、彼岸での再会を夢見て時間を過ごすようになった。大学生になったわたしは最後の入院まで祖母と二人暮らしたが、あのとき、もっとあの味を教わっておけば良かったなぁと時々懐かしく思い返す。(若さ故に料理を受け継ぐことの大切さに気が付けなかった苦さを含めて)

時間はいつまでもあるものではないし、これまでいくら経験を積み重ねてきても結局のところ自分が"今"、誰にとって何を出来ているのかに尽きるのかなぁと、歳をとるごとに身に沁みてくる。私は料理を作る際、これを口にしてくれるこの人やあの人がほんの少しでもしあわせになれますようにと願いを込める。たまに(というかしばしば)おざなりになったりもするが、今年は丁寧さを心がけて料理を届けられるよう精進したい。

新年初日の日記にはrockな一曲を。日本では成人の日を含み3連休。お仕事の人も、休める人にも束の間でもhappyな時間が流れますように。


The Rolling Stones - Start Me Up (Sweet Summer Sun - Hyde Park)

<ごはん日記>