300と数十日の食卓

食べること,本を読むこと,音楽をめぐる時間

32冊目『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』から5回めはクーブイリチー

[32-5]『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』より5回めはクーブイリチー(p. 73~)

『婦人之友』『明日の友』読者のみなさん、本谷恵津子、横山宗一、小関泰著、婦人之友社発行、 料理 仙台友の会、 撮影 佐藤則子、鈴木正美、松田哲郎、本社写真部、 デザイン 塚田佳奈、スタイリング 駒井京子、 2017年3月11日初版発行 

暑くなったが、風が強くて心地よい金曜日は沖縄風の煮込み料理を。

調理時間:小1時間(昆布を塩抜きする時間は除き)

主な材料:塩蔵昆布、豚三枚肉、こんにゃく、かまぼこ、しょう油、砂糖、酒、みりん等

調理の流れ:昆布は細切りにしてから塩分が少し残る程度に塩抜きする。豚肉は茹でてから細切りにし、こんにゃくは細切りにしてから茹でる。かまぼこも細切りにする。鍋にサラダ油と調味料を入れて一度煮立たせてから昆布、豚肉、こんにゃくを加えてざっくり混ぜ合わせ、水を注ぎ入れことこと煮込む。最後にかまぼこを加える。

出来上がった料理:「みんなの昆布レシピ」よりクーブは昆布、イリチーは炒め物をさす沖縄料理を再現する。

出汁を含んで柔らかく煮込まれた昆布と、細く切っても存在感のあるこんにゃくは歯ごたえも楽しいし、カラフルなかまぼこの色も沖縄らしさを演出しているので、豚肉も含めて欠かせない食材の4つ。この最低限の材料でビックリするほど美味しい沖縄料理が作れるが、余力があれば、切り干し大根、干し椎茸、千切りにしたにんじん、細切りにした油揚げのいずれかを加えるとさらに美味。

砂糖の指定は無いが、ミネラル分たっぷりの黒糖があれば少し加えると味に深みを出せる。また豚肉を茹でた汁はアクを取り除いて、煮込む際に水の代わりに加えるとこくが出るし、地球にも優しい。

コトコト煮込む時間はかかるけれど、常備菜としても使えるので、明日の自分のためにと思って気長に待とう。一口食べるだけで、うわ!うまっ!とビックリし、箸を進めるうちに、豚肉と昆布の旨みにじんわり包みこまれるような美味しさがある。これ、お酒と絶妙にあいます。

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日本の昆布はほとんどが北海道と三陸で生産されており、沖縄では採れないのに消費量の高さで有名だ。数年前までの消費量、全国一位富山県は北前船の寄港地だったことで昆布を食べる文化が育まれたそうだが、日本海側を旅して鹿児島にたどり着き、沖縄で中国に輸出される昆布が荷下ろしされたことにより、早くから昆布を使った料理が定着したとのこと。こうして食材の歴史を調べ始めると、様々な文献を読み比べたくなり夜も眠れなくなる(笑)

 

少し前に某SNSで、人生で影響をうけた10冊の本というハッシュタグが流行ったが、内容を見ると10冊も本を読んでいないという20代が多く、実際東京でその年代の人に話を聞いてみると雑誌や漫画を除くとほとんど本は読まないという。そこまで読書離れがすすんでいるなんてとビックリしたが、Twitterの140文字ですら読むのに長いと言われると、驚きを通り越してこれからくる未来はどんなだろうと想像するほど。感覚的なものも大切だけれど、ことばで考えることを磨くには、本を読むのがよいとわたしは思うのだけれど。

さて一週間お疲れさまでした。気持ちの入れ替え、身体を休めたり、ここぞとばかりやらなきゃならないおうち作業もあるかもしれない、それぞれの素敵な休日時間を。

<ごはん日記>

32冊目『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』から4回めは昆布と手羽中の中華風煮もの

[32-4]『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』より4回めは昆布と手羽中の中華風煮もの(p. 53~)

『婦人之友』『明日の友』読者のみなさん、本谷恵津子、横山宗一、小関泰著、婦人之友社発行、 料理 仙台友の会、 撮影 佐藤則子、鈴木正美、松田哲郎、本社写真部、 デザイン 塚田佳奈、スタイリング 駒井京子、 2017年3月11日初版発行 

更新が暫く滞っていたけれど、時間をうまくやりくり出来なかっただけで、毎日のご飯をおいしく食べて元気に過ごしています。本日は少し時間はかかるものの、うっとりするほどに美味しい煮込み料理を。

調理時間:40分ほど(昆布と干し椎茸を戻す時間を除き)

主な材料:鶏手羽中、塩蔵昆布、干し椎茸、生姜、ごま油、酒、しょう油、砂糖、みりんなど。

調理の流れ:昆布は縦半分に切り、洗ってから塩抜きして結ぶ。干し椎茸を戻し、石突きをのぞき、半分に切る。フライパンにごま油、しょうがを入れて香りが出るまで熱し、手羽中を加えて焼き色がつくまでしっかり焼き、酒をふり入れアルコール分を飛ばす。昆布、干し椎茸と干し椎茸の戻し汁を入れて、落としぶたをして20分ほど煮る。調味料を加えて煮汁が無くなるまで更に煮る。

出来上がった料理:「料理のプロのレシピ」より昆布、干し椎茸に鶏の手羽中から出るうまみをたっぷり含んだ煮物を再現した。

材料を見るだけでもこの組み合わせは美味しいに違いないと感じさせるし、実際出来上がった料理を口にすると、ほうっと思わずため息がでる程のお味に仕上げられる。から揚げとはまた違う、口の中でじわじわと美味しさが広がっていく煮物は、骨からするっとはがれる鶏肉、煮汁をたっぷり含んだ干し椎茸、見た目は地味だけれど主役の昆布のどれも冷めても美味しいので普段の食卓にも、おうちでの飲み会でも大活躍するだろう。

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本書でも、帰省時か出張料理時に作って、誰かに食べてもらいたい料理に出会えた。「ポルトガル風の豚とあさりの昆布蒸し」も誰かと分かち合いたい美味しさだし、この本ではまだまだ素敵な出会いがありそうで、明日からの料理も楽しみになる。

 

本人、至って呑気で自覚は無かったのだけれど、家族には心配をかけているようで、先日遂に末弟が東京に訪ねてきた。第一志望の大学にふられ、次の年まで頑張ると言い張ったわたしに母が強固に反対して、参考書を全て捨てられた上、制服採寸時の直前逃亡の防御策にと付き添い派遣されたのもこの末弟だった(笑)あのときも今も人生の節目に立っているけれど、本命校に再挑戦していたかもしれない自分が、あったかもしれない未来が今もすこし眩しく感じられるので、今回は明るくて、おもしろみがある方向をしなやかに選べるようにしたいなぁ。

こんな時にふと聴きたくなるSIONのやさしい歌の詞を少し長めに引用する。

空を飛びたいなら、飛行機に乗らなきゃ。どこからでも飛べるわけじゃない。test test testを重ねて。プロペラは回るか、翼は歪んでないか、どこからでも飛べるわけじゃない。(中略)青い空の日だけじゃない。強い風が吹いたり、雨が降ったり、雷が鳴ったり、目をつむって飛ぶ歳じゃない。悲しいあなたを想ったり、かわいい君を想ったり、おまえを思ったり。
~test/SION~


test SION

<ごはん日記>

32冊目『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』から3回めはわかめとベーコンのオムレツ

[32-3]『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』より3回めはわかめとベーコンのオムレツ(p. 28~)

『婦人之友』『明日の友』読者のみなさん、本谷恵津子、横山宗一、小関泰著、婦人之友社発行、 料理 仙台友の会、 撮影 佐藤則子、鈴木正美、松田哲郎、本社写真部、 デザイン 塚田佳奈、スタイリング 駒井京子、 2017年3月11日初版発行 

雲が空を覆っていたものの、朝にポツポツと降ってきた雨もすぐに止んで過ごしやすかった月曜はわかめを使った卵料理を。

調理時間:10分以内(わかめを塩抜きする時間は除き)

主な材料:卵、塩蔵わかめ、ベーコン、マヨネーズ、イタリアンパセリ、ラディッシュなど

調理の流れ:わかめは軽く塩抜きしてから1cm幅に刻む。ベーコンもわかめと同じ1cm幅に切る。フライパンにマヨネーズを熱し、ベーコンを炒めた後、わかめを加えさっと炒める。溶き卵を入れてさっくり混ぜ合わせながら火を入れる。半熟になったら形を整える。

出来上がった料理:「みんなのわかめレシピ」より、ふんわりとした卵の中に入ったわかめがほどよいアクセントとなるオムレツを作った。

え?なんでオムレツにわかめ?と驚かれるかもしれないけれど、食べてみると違和感は全くない。いや、違和感どころかむしろ美味しい。ベーコンを釜揚げしらすに代えて和風に仕上げても絶対あう。その場合は丼仕立てにして、小口切りにしたネギをのっけて食べてみたり。

卵料理を作る時、溶き卵にマヨネーズを加えると、熱を加える際に起こるたんぱく質の結合をほどよくおさえることが出来て、冷めても口当たりよく仕上げられることはメディアでもよく取り上げられているが、今回のレシピのレシピでは炒め油の代わりにマヨネーズを使う。バターやオリーブオイルを使ったときとはまたひと味違うコクが出るのが面白い。

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ゆったり過ごす休日の朝、イタリアンパセリとラディッシュの他にさっと炒めたマッシュルーム、プチトマトとフレンチフライも用意してお皿に盛りつけた。しっかり火が入っているように見えるけれど、切ると中はとろとろのオムレツをポテトに絡ませて食べるのも美味。野菜をたっぷり食べているとしあわせな気持ちになるが、卵料理もまた幸福感をもたらしてくれるので、野菜+オムレツというごはんでご機嫌な朝から一日をはじめられた。


最近、ラジオの人気が高まっているのだそうだ。radikoというアプリのおかげでコンピュターやスマートフォンでam、fmを気軽に聴けるようになり、今の時代、テレビよりも情報を受け取りやすいメディアとなったのも一因だろう。5月の満ち足りた休日の朝に、こういう高音の抜け感が心地よい曲がふとスピーカーから流れてくると、外は曇っていても気持ちはぱあっと晴れあがる。


Mêlée - Built To Last (Video)

<ごはん日記> 

32冊目『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』から2回めはポルトガル風豚とあさりの昆布蒸し

[32-2]『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』より2回めはポルトガル風豚とあさりの昆布蒸し(p. 78~)

『婦人之友』『明日の友』読者のみなさん、本谷恵津子、横山宗一、小関泰著、婦人之友社発行、 料理 仙台友の会、 撮影 佐藤則子、鈴木正美、松田哲郎、本社写真部、 デザイン 塚田佳奈、スタイリング 駒井京子、 2017年3月11日初版発行 

早朝散歩をしていると樹々のかおりが強くなってきて、夏がやってくるぞと感じさせる金曜は白ワインがすすむ料理を。

調理時間:20分ほど(昆布を戻す時間は除き)

主な材料:塩蔵昆布、豚こま肉、ざく切りキャベツ、あさり、パセリ、しょう油、すりおろしにんにく、白ワインなど

調理の流れ:昆布は食べやすい長さで5~6mm幅に切りに切り塩抜きをする。豚肉に調味料を揉み込みしばらく置く。鍋にキャベツ、昆布、豚肉を順に重ね、オリーブオイル、塩、こしょうをしてからフタをしてしばらく蒸す。あさりとパセリを加え、あさりの口が開くまでさらに蒸す。

出来上がった料理:「みんなの昆布レシピ」より豚肉とあさりの旨味を重ねる定番ポルトガル料理に、昆布まで加えてさらに美味しくなった蒸し物を再現した。

工程も、材料も少ないので、火を入れすぎて豚肉が固くなってしまうことにだけ気をつければ、海で育まれた旨味と、豚肉のもつ特有のあまみが相まった極上の料理を気軽に作ることが出来る。全ての出汁を含んだ昆布は、きゅっという歯ごたえまでもご馳走で、噛むたびに広がる美味しさに口中が喜ぶ。いつでもとっても美味しい料理だけれど、春キャベツが出回り、あさりのシーズンと重なる4月ごろに作れば、さらに白ワインが進みそう。

料理を作るときに、これは必要?と悩む人が多いが、パセリは彩りだけではなくて熱を加えることでほんのり爽やかな香りを添えてくれるので、生がなければドライタイプのものでもぜひ使って欲しい。味に立体感が出てぐんと美味しくなります。

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東京で暮らすようになってから、豚肉のおいしさに開眼した。今のところ、レシピの再現も豚肉を使った料理が多くなっているが、京都に住んでいたなら牛肉か鶏肉の頻度が高くなるだろう。(高級スーパーの総菜を使ったレシピ集等の特殊なものを除き)料理本は全国どこに居る人にでも普く美味しい料理が作れるように意図して作られているので、今現在やこれまで再現しているレシピ以外でも季節と場所を変えると作りたくなる料理はきっと沢山ある。名レシピを取りこぼしている感は拭えないが、紹介したい本は幸いにも次々出てくるので、いまは目をつぶって前へ進もう。

緑がどんどん深くなり、木陰を歩くのが心地よくなり始めた。風薫る季節、目にするものも、緑のかおりも輪郭が濃くなっていることに気がつく時間が作れますように。すてきな休日をお過ごしください。

<ごはん日記>

32冊目『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』から初回は麻婆茎わかめごはん

[32-1]『三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80』より初回は麻婆茎わかめごはん(p. 46)

『婦人之友』『明日の友』読者のみなさん、本谷恵津子、横山宗一、小関泰著、婦人之友社発行、 料理 仙台友の会、 撮影 佐藤則子、鈴木正美、松田哲郎、本社写真部 デザイン 塚田佳奈、スタイリング 駒井京子、 2017年3月11日初版発行 

少し遅ればせながら新わかめの季節。本日よりその時期にあわせて出版された料理本を取り上げる。

調理時間:20分ほど(茎わかめを戻す時間を除き)

主な材料:塩蔵茎わかめ、木綿豆腐(水切りした後、2~3cmの角切り)、豚挽き肉、みじんぎり長ネギ、みじんぎりセロリ、みじんぎりニラ、みじんぎりにんにく、みじんぎり生姜、豆板醤、豆豉、酒、オイスターソース、しょう油、コショウ、さとう、粒山椒(荒く刻む)、ごま油など

調理の流れ:茎わかめは2cm長に切って塩抜きする。フライパンにサラダ油を熱して香味野菜の香りが立つまで炒めたら、豆板醤、豆豉、豚挽き肉を入れて肉の色が変わるまで炒める。調味料を加え入れ暫く煮てから山椒、ごま油、茎わかめを加えて更に煮る。最後に水切りした豆腐を加えて火が通ったらごはんの上にかける。

出来上がった料理:前回取り上げた自由学園の料理本と時をほぼ同じくして出版された、婦人之友社の東北震災支援活動の一環の料理本より、わかめや昆布の料理を再現していく。

初回は全国の『婦人之友』や『明日の友』読者、プロの料理人やその他様々な人から寄せられた料理の中より選ばれた「みんなの茎わかめレシピ」の中華風丼を作った。茎わかめを入れるだけでも珍しいが、セロリを加えることでごくほんのり香りがたち、肉の脂っぽさがまろやかになるレシピ。お豆腐の分量が少なくとも、肉厚の茎わかめのコリッとした食感で食べ応えがあり、丼ものなのに罪悪感なく幸せに満腹になるまで食べられる。わかめと昆布を使ったレシピの初回にして、うわぁ、これは美味しいと唸らされる。

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わかめや昆布など、海藻を日常的に食べる国民は実は少ない。なのに、現代日本に生きているわたしたちの中で海草類を料理にうまく扱える人は、私を含め(多分)少なくて、かつ三陸沿岸の食品をつくる人と食べる人の繋がりを知り、深めるための本を取り上げることにした。しょっぱなから、少々興奮する位に美味しい料理が出来上がったので、これからレシピを再現していくのがとても楽しみだ。

いろいろな仕事を経てきたがほぼ事務畑で生きてきたのを、東京で料理教室に通い始めたことで繋がりが出来て、初めて料理研究家の先生のアシスタントにつかせてもらったのが3年前。初仕事の博多を皮切りに、東京でも時折お仕事をいただいていた先生がこの度ニューヨークに拠点を移された。日本でも随分活躍されていたのに、アメリカで仕事に取り組むことを選ばれた決断力に驚き、そして勇気をわけてもらう。その土地土地で固有の文化はあるものの、料理に関するきちんとした知識や技術はどこに行っても、いくつになっても活かすことが出来る。一大決心を下された素敵な先生のあかるい明日をこころより願う。

自分が美味しいと感じる料理を作れることは大切だけれど、食べてくれる人が美味しいと言ってくれるように寄り添うことも大事で、でもそこにあまりに重きを置くと、例えば栄養バランスが崩れたりもするので、お互いの許容範囲を探りながら出来るだけ沢山の人がしあわせな食卓を囲めますように。

<ごはん日記>