300と数十日の食卓

食べること,本を読むこと,音楽をめぐる時間

55冊目『実用の料理 ごはん』から2回めはサンマの香味ごはん

[55-2]『実用の料理 ごはん』から2回めはサンマの香味ごはん(p.28~)

高山なおみ著、 株)京阪神エルマガジン社発行、 アートディレクション・デザイン 有山達也、デザイン 中本千春、撮影 齋藤圭吾、スタイリング 高橋みどり、イラスト 牧野伊三夫、編集 赤澤かおり、村瀬彩子、稲盛有紀子 2015年12月1日初版発行 

ゴミ箱にテッシュの花が満開になるほどの風邪っぴきで、更新が遅れた。

調理時間:40分ほど(お米を浸水させる時間は除き)

主な材料:米、頭と尾っぽを切り落とし二枚におろしたサンマ、昆布、千切りにしたしょうが、ほぐしたまいたけ、短めに切った三つ葉、小口切りにした万能ねぎ、白ごま、ごま油、酒、しょうゆ、塩、すりおろしたしょうがなど 

調理の流れ:研いだ米は調味料と水をあわせていつもの水加減にして、昆布をのせしばらく浸水させる。さんまは半分の長さに切り、水で洗って汚れを落とし、キッチンペーパーで拭った後に下味調味料をふりかけ、冷蔵庫でしばらく休ませる。米の上にしょうがとまいたけをのせて炊く。フライパンにごま油を入れ熱し、サンマの皮目を下にして強火でしっかり焼き目をつける。美味しそうに焼けたら裏返し、蒸し焼きにして、中骨と小骨を取り出しさっくりほぐす。米が炊き上がったら、昆布を取り出し、さんまをのせてしばらく蒸らす。その後、香味野菜とごまをふり混ぜ、器に盛る。好みで粉山椒を。

出来上がった料理:「季節の炊き込みご飯」より、まるまるっと一匹の塩焼きが美味しいに決まっているけれども、丸焼きにするには魚焼きグリルがないと難しいし、部屋のにおいが気になってなかなか作れない人にとって、オススメの炊き込みご飯を再現した。

おろししょうがも入れた下地につけること、ごはん自体に千切りしょうがや舞茸の香りをまとわせること、仕上げに三つ葉、ねぎ、白ごまを加えることで、さやわかさが増して、冷めても青魚のにおいはほとんどしないくらい。さんまはご飯の上で蒸らすことで程よく脂が身から抜け、お米に浸透するので、香味野菜ばかりであっさりしすぎるんじゃないの?という疑問は払拭される。

初回はレシピ通り作ったが、それ以降は野菜室にあるものを使って、例えばまいたけをしめじにして、香りを補うためにミョウガの薄切りを加えたりと、それぞれの味やアレンジを楽しんでいる。味付け調味料は前回の牡蠣ごはんとほぼ同じ配合なので、これが黄金律なのだろう。つまりこれさえ覚えておけば、魚を具材にした炊き込みご飯は自分なりに美味しく作れるということ。仕上がりで、味見をして塩っ気が足りなければ、お塩をパラリと振り混ぜれば良いし、お漬物やお味噌汁が用意されているなら、薄味の方が全体のバランスが取れる。誰かが幸せになる味を作るために、失敗を恐れず、いろいろ挑戦してみると料理って面白いなぁと感じられるようになる。(作り直せ!と言われると、ムカつくけどね、うちの父親は母に対してよく口にする(笑)不器用ながらに甘えているんだな)

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画像はレシピをアレンジしたもの。サンマを入れる際にみょうが半量を加え、炊き上がりに他の香味野菜とともに残り半量を加えた。土鍋ごと撮る方がやはり美味しそうに見える。

 

雪の積もった景色がSNSに掲載され始め、あの墨絵のような白と黒の絶妙の入り混じり具合をこの目で見たくて、ひゅうひゅうと吹く冷たい風を感じたくて、師走は秋田か青森にでも旅に出ようかと考えたが、この1週間は熱との戦いで、やらなければならないのに出来ないことが見る間に増えて、12月のことなぞのほほんと考えたらバチが当たる状態。早く治そう。

<ごはん日記>

55冊目『実用の料理 ごはん』から初回は牡蠣ごはん

[55-1]『実用の料理 ごはん』から初回は牡蠣ごはん(p.31~)

高山なおみ著、 株)京阪神エルマガジン社発行、 アートディレクション・デザイン 有山達也、デザイン 中本千春、撮影 齋藤圭吾、スタイリング 高橋みどり、イラスト 牧野伊三夫、編集 赤澤かおり、村瀬彩子、稲盛有紀子 2015年12月1日初版発行 

日が高いあいだはシャツ一枚で十分な日があったり、足元がぐうっと冷え込む日もあって、暖冬と予想されている今年も冬がそろりそろりと近づいてきた。

調理時間:30分ほど(お米を浸水させる時間は除き)

主な材料:米、大きめの加熱用生ガキ、昆布、千切りにしたしょうが、酒、薄口しょうゆ、塩、ごま油 

調理の流れ:米を研ぎ、調味料に水を加え米と同分量の水加減にして、炊飯器に入れさっと混ぜる。昆布をのせてしばらく浸水させる(米により時間は調整)十分に米が水気を含んだら、しょうがをのせ、炊く。カキは塩水で振り洗いし、水気を切っておく。ぽわぽわ大きな泡が立ち始めたらカキをあまり重ならないように米の上に並べて、なるたけ早く蓋をしめて引き続き炊く。蒸らし終わったら昆布を取り除き器に盛る。

出来上がった料理:「第2章 炊き込みごはん」の季節の炊き込みごはんより、猛暑につき例年より出荷が遅くなった牡蠣を使った料理を再現した。

何度か作った上での注意点。まず調理器具について、愛用のstaub社製La Cocotte de GOHAN gohanでも炊いたが、土鍋を使った時の方がおこげがしっかり入るし、お米の上に牡蠣を重ねずに入れられるので、今回は土鍋を推奨する。次に食材。ごま油は香りが高いものよりも、透明な太白ごま油を使う方がより上品に仕上げられる。そしてこれまでも何度か記しているが、加熱用の牡蠣を使うこと。熱を入れて食べるなら、滅菌処理を施された生食用の方がよりも断然に美味しいから。

器によそった後は、まずは牡蠣から食してみよう。むっちりした歯ざわり、口の中には牡蠣の旨みがあふれ出て、目を閉じてしっかり味わいたくなる。ごま油が入っているので、炊飯器を使わなくとも焦げ付かず、こびりつかず、でもおこげは美しく仕上げられるし、お昆布と一緒に炊くことでスッキリと、でもしっかりした深みが生まれる。しょうがのぴりっとした刺激も名脇役で、出しゃばらせすぎないためにはできるだけ細切りにする方が良さそうだが、この辺りはお好みで。

素材の持ち味をぐぅんと活かした味付けなので、炊きたてのごはんはもちろん、冷めた後もとっても美味。牡蠣はすぐに食べてしまうので、炊き込みごはんの主役であるごはんが残ったら、次の食事としてとっておきのお楽しみ。牡蠣の出汁を含むとお米の甘さが際立ち、季節限定のお味なのでより愛おしくなる。おにぎりにして焼いても最高。

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海の香りがふわっと漂うぷっくりした大粒の牡蠣がのっかったごはんは、モノクロな外見ながらも滋味に溢れている。今季繰り返して作ること請け合いの炊き込みごはん。

 

いつもは懇意にしているお店に予約し、取り寄せているボジョレーなのに、今年はあれ?解禁日はいつだったっけ?となるくらい関心が薄かったが、食材の買い出しついでスーパー2軒を巡って結局3本入手(笑)食べものに関わる仕事に従事しているのに、そしてお酒もこよなく愛しているのに、毎年一度のお祭りを味わわない手はないよなぁと別にしなくともよい言い訳をしつつ、ぐびぐび飲んでいる。

映画公開に伴いQueenに脚光が当たっているが、このところyoutubeで繰り返し聴いているのはDavid Bowie。レコードでしか音源を所持していないので、今度懐に余裕が出来たならデジタルで買い揃えよう。今回は1983年発表の"Modern Love"を87年pepsiのCM用にTiner Turnerとリテイクしたものを紹介する。

気温が安定しないので、体調にはお気をつけて、赤や黄色に色づいた木々を愛でられる週末を過ごせますように。


Commercial Pepsi Cola Creation w David Bowie & Tina Turner Modern Love YouTube 480p

<ごはん日記>

[お知らせ]次回更新について

いつもご覧頂き、ありがとうございます。

夢にまで見た新米の季節。これまでのところ、粒が大きくて吸水率が高いため浸水不要な「龍の瞳」(岐阜県乗鞍山麓米)、名前に惹かれた「富富富」(富山県産)そしてみんなに大人気「新之助」(新潟県産)の新米を入手。

大切に育てられたお米をいかに美味しく、なるたけ一粒も残さずに食べてもらえるかは、ここ5年以上の課題で、勢い所持している米関連料理本の数もカレー本に劣らず多い。何回か試作中だがピンと来ず、次回更新までもう少しお待ちください。

焼き塩ジャケや、自家製いくらの醤油漬けにツヤツヤと輝き、ふんわり甘い香りを漂わせる炊き立てご飯など、シンプルなほうがお米そのものの味はわかるんだけれど、新しいかったり、少し変わったものを求められている気がしていて、どうしたら書き手、読み手双方にとって面白いものになるかなぁと考えていたりもする。ま、最近とみに鳥頭で(笑)、あまり難しいことは考えられないので、楽しく更新できる方向を探ります。

では、10月最後の日曜日が素敵なものになりますように。

心が削られたら見て、笑って元気をもらえるちぃたん ⭐︎の動画。ほんと大好き。


イカすマシーンを買ってもらいましたっ☆ちぃたんですっ☆

 

54冊目『和えるおかず』から最終回はラム肉のスパイス和え

[54-7]『和えるおかず』から最終回はラム肉のスパイス和え(p.36~)

坂田阿希子著、 株)世界文化社発行、 ブックデザイン 縄田智子 L'espace、撮影 新居明子、スタイリング 佐々木カナコ、取材・構成 新田草子、編集 北野智子 2017年7月25日初版発行 

すっかり空が高くなって、日が暮れるのが早くなって、通り過ぎる家に灯るあかりのやさしさに寂しさを感じたり、逆に家族の温もりを感じたりする季節。

調理時間:10分ほど

主な材料:紹興酒、ごま油、しょうゆを揉み込んだ焼肉用ラムもも肉、薄切りにしたにんにく、赤唐辛子、クミンシード、フェンネルシード、コリアンダーシード、ローリエ、八角、しょうゆ、黒酢、塩、ざく切りにした香菜など 

料理の流れ:油を注いだフライパンにニンニクを入れ、弱火でじっくりと香りが立つまで火が入ったら、全てのホールスパイスを加え、ニンニクがきつね色になるまでじんわり炒める。スパイスの香りが開いたら、スパイスと油とを分ける。フライパンに先ほどの油少々を注ぎ、ラム肉をこんがり焼いて取り出す。残りの油、スパイス、調味料、香菜で和える。

出来上がった料理:「肉の"和え"おかず」より、大好物のラム肉を使ったエスニック調の料理を再現した。

インド料理に使うスパイスはほとんど常備しているので、私の場合は問題無かったが、フェンネルシード、八角あたりは買い足す必要がある方もいらっしゃるかもしれない。フェンネルシードは魚料理やズッキーニとの炒め物にも使えるし、八角は豚バラ肉の煮込みや中華料理での香りづけに大活躍するので、これを機に揃えるのもオススメする。無くともそれなりの味にはなるだろうが、フェンネルシードの独特の甘みや八角特有の香りはこの一皿を数段美味しく、そしてあとを引く味にさせてくれる。

暑い時期に何度ともなく作ってビールとともにご機嫌な時間を作ってくれたレシピ。神田にあるお気に入りの中華料理店で食べるラム肉はそれはもう絶品だが、おうちで自分が作ったスパイス和えは愛おしさ、気楽さも加わって、一口目は思わずむぅをおーと唸るほどに美味しい。二口目以降は口中に広まる調和のとれたスパイスの香りとラム肉の旨み、香菜のクセをぷわぁっと楽しみ、ビールを飲んで笑うことをただただ繰り返すのみ。

ラム肉や香菜は好き嫌いがあるので、万人受けする料理ではないが、お好きならぜひ作って欲しい。こうして文章を書いているだけで、味を思い出し、食欲をそそられるほどにお気に入り。 

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まとめに代えて:期せずして、長期間に渡ってお届けすることになった坂田さんの『和えるおかず』だが、今年に入ってから一番よく使った料理本である。肉、魚、野菜という章立てで、おかか等を使ったシンプルな和えもの、和え麺も少数だが載っているのは嬉しいところ。最近は自分のレシピを考えることが多くなったり、レシピや味が合う料理研究家がほぼ固定されたこともあるが、坂田さんの場合、シンプルなものも、それなりに材料を揃えて下準備が必要なものも、どちらもバランスよく掲載されており、何を作ってもほぼ間違いなくおいしく作れる。ここまで再現性の高いレシピをよく作れるなぁと感心させられる。表参道近辺でお料理教室も主催されているので、機会がある方はまず参加されてみては。料理をされるご本人の手元を見て、お話を聞き、実際に作られたものを食べるのは料理上手になる近道のひとつ。 

 

先月末はいつものように前日に思いついてふらっと松本に旅行。大好きなきのこをお店の方に感心されるほどモリモリ食べてきたが、そういえば今年の夏は枝豆に溺れた。新潟の黒崎茶豆、山形のだだちゃ豆や、長野、秋田、青森、京都の黒枝豆と1日1食は枝豆一袋を食べていたくらい。茹でたての熱々も美味しいが、冷めた頃が豆の持ち味がくっきりして好きである。茹で上がったものを塩水に漬けるのもお酒にピッタリでとてつもなく美味しい。食品売り場ではきのこ勢が圧倒的に優位になってきたが、産地や品種によっては今が美味しいものもあって、枝豆ハンターとしてはまだ目が離せない。

先週は結成19年で遂に武道館に立つ京都のバンドROTTENGRAFFTYの勇姿をこころと身体に刻むために久しぶりのライブ。今をきらめく音ではないが、こういう音作りが好きな人にとっては堪らないし、何より観客みんなの愛に包まれた空間と時間に打たれ、気がつくとほろほろと涙流れる。あぁやっぱりライヴはものすごい楽しくて、力をもらえるもんだと再認識できたよい夜だった。

連休続き、気温も安定しないので、ずぅんと疲れが出る頃だが、みなさまそれぞれにとって素敵な休日を。1週間おつかれさまでした。

 


金色グラフティー / ROTTENGRAFFTY

<ごはん日記>

54冊目『和えるおかず』から6回めはあじのおろしきゅうり和え

[54-6]『和えるおかず』から6回めはあじのおろしきゅうり和え(p.44~)

坂田阿希子著、 株)世界文化社発行、 ブックデザイン 縄田智子 L'espace、撮影 新居明子、スタイリング 佐々木カナコ、取材・構成 新田草子、編集 北野智子 2017年7月25日初版発行 

強風を伴う台風が去って、肩の力が抜ける間も無く次の台風発生というニュースが。今年はもう台風さん、満員御礼で良いんじゃなかろうか。

調理時間:10分ほど(あじを塩でしめる時間を除き)

主な材料:三枚におろしたお刺身用あじ、すりおろしたきゅうり、小口切りにしたみょうが、すだちの絞り汁、合わせ調味料(酢、薄口しょうゆ、塩)、穂じそ 

調理の流れ:あじの全面に塩をふり、冷蔵庫で1時間おく。その間に、すりおろしたきゅうりをざるにあげ、適当に水気をきり、合わせ調味料を加え混ぜておく。

あじの表面をキッチンペーパーで拭き取り、川をひき、一口大に切りすだち果汁をまぶす。ボウルにあじ、みょうが、和え衣を加え混ぜ、器に盛ったら穂じそを散らす。

出来上がった料理:「魚の"和え"おかず」より、7月ごろが旬だが今も出回っているあじを使った和えものを再現した。

あじに塩をふってある程度の時間を置くことで、身がしまり包丁で切りやすくなり、下味もつく。柑橘類をふりかけるときにたつ爽やかな香りが台所中に広まり、魚の臭みを感じさせなくなるのも嬉しい。

酢の種類は指定されていないが、京都産の千鳥酢と和歌山産の梅酢を混ぜ合わせて使った。酢はイタリア、フランスのものも含めて5種類を常備しているが、和食には国産の酢が似合うし、あれば2種類混ぜ合わせると奥行きが出る。取り合わせに関しては、味見をしながら好みを探るとお料理の楽しさも味わえる。

塩を馴染ませ、そぎ切りにしただけでもお酒が進むお味だが、そんなあじにすりおろしたきゅうりに酢醤油、みょうがを纏うと清々しい風味が増す。緑に染まったあじは、みょうが特有のクセがアクセントになり日本酒が非常に進む。あじと和え衣の絶妙なバランスをはむはむと口中に味わっていると、ふわっとそしてうっとり幸せになれる。

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実は、これ、母の得意料理でもあり、嫁いで来たときに作ったら父方の祖父に大いに気に入られた逸話付きの一品。厳密なレシピは異なれど、こうした縁が繋がって行くのは嬉しい。

 

9月に引っ越す予定だったが、そして引退詐欺ならぬ引越し詐欺の疑惑がかけられ始めたが、まだ東京に住まわせてもらっている。先日は東京にいる間に遊びに行く!と5年ぶりに家族や仕事の時間を離れて愛知県より日帰りで幼馴染が会いに来てくれて、新宿でデート。中高時代の懐かしい話や今に到るまで話題には事欠かないが、学生の頃とは違い、それぞれの守るべきこと、人や時間がある。結婚したお相手のお子さんが出産されて早々にお婆ちゃんになった後輩や、いち早く星になってしまった同級生の話など、人生は短いという話につきる。

翌日、早くもっと幸せになりなさいというメッセージをもらう。搾りかすみたいな状態だけれど、うん。そろそろ頑張るよ。背中を叩いてくれてどうもありがとう。

10月になったが生きることの切なさとか、男女の捉える幸せの在り方の、愛の行違いが描かれた曲とともに。


Green Day - Wake Me Up When September Ends [Official Music Video]

<ごはん日記>