300と数十日の食卓

食べること,本を読むこと,音楽をめぐる時間

54冊目『和えるおかず』から3回めは砂肝のねぎだれ和え

[54-3]『和えるおかず』から3回めは砂肝のねぎだれ和え(p.34~)

坂田阿希子著、 株)世界文化社発行、 ブックデザイン 縄田智子 L'espace、撮影 新居明子、スタイリング 佐々木カナコ、取材・構成 新田草子、編集 北野智子 2017年7月25日初版発行 

気がつけば立秋も過ぎ、空から降ってくる蝉の鳴き声よりも草の後ろから聞こえてくる虫の声が増え始めた。多めに作って冷蔵保存しておくと、便利な一品を再現した。

調理時間:25分ほど

主な材料:白い筋を取り除いた砂肝、砂肝の茹で汁、長ネギ(薄切りとみじん切りの2種類を用意する)、おろし生姜、酒、塩、ごま油、黒胡椒など。

調理の流れ:鍋にお湯をグラグラと沸かし、酒、砂肝を入れて茹でる。表面の色が変わったら火を止め、蓋をして粗熱が取れるまでおいておく。冷めたら取り出し、そぎ切りにしてボウルAに入れておく。みじん切りにした長ネギ、生姜、塩はボウルBに入れ混ぜておく。小さめのソースパンにごま油を入れて軽く煙が立つほど熱したら、ボウルBに注ぎさっと混ぜた後、砂肝の茹で汁を加え、菜箸などでよく混ぜる。ボウルAに薄切りにした長ネギ、ボウルBの和え衣を加えさっくり混ぜ合わせてから黒胡椒を挽く。

出来上がった料理:「肉の"和え"おかず」より、口の中で噛めば噛むほどじんわり味を楽しめる和え物を再現した。

砂肝の処理がちょっとだけ面倒かもしれないが、最近では薄切りになった砂肝が売られていたりもするので、それを利用するととっても簡単に作れてしまう(私ももっぱらスライス済みを購入している)一品。

長ネギ、生姜、ごま油、茹で汁に塩というシンプルな味付けが故に塩を入れすぎてしまうとバランスが全く狂ってしまう。そんな時は慌てずに薄切りネギを追加しよう。白ネギが無ければ小口切りにした青ネギでも緑が綺麗で、美味しい。 

油の風味が際立つ和え衣なので、砂肝は炒めるのではなく茹でることでよりあっさりと、そして包丁でもそぎ切りしやすくなる。つまり生の状態で包丁を使うことも無し、なま肉用のまな板の手入れも不要。なんて私たちの気持ちをわかってくれているレシピなんだろう。

ビール、ワイン、焼酎にも合うので、かれこれ5回以上は作り、友人宅にもおすそ分けしているがいつもとても喜ばれる。おろし生姜が隠し味になりネギのダブル使いも相待って油っこくもないし、幅広い年代に受けるお味で、オススメ。

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冷蔵保存しているのをつまみながら、ご飯の支度をしていたりする。 

 

気がつくと前回の更新より1ヶ月以上間が空いているが、何かあったのかと問われるとまぁあったし、ようやく我にかえってblogを書けるようになったというところ。西日本の豪雨や、他のことはこれからぼちぼち記していくが、今日はつい先日他界されたフランス料理の重鎮Joël Robuchonについて。5年ほど前の私は東京で事務職に就きながら、平日夜間と週末はカジュアルな料理学校に通っていた。恵比寿のガストロノミー・ジョエル・ロブションで女性初の魚担当長に就かれた先生に直接指導を受けたり、当時ロブションでエクゼクティブシェフだった渡辺雄一郎さんの特別授業も受けていたし、氏に直接お目にかかることは無かったが、料理を作ること、食べてもらうこと、哲学的なものはロブション関係者から学んだ。そんな経緯もあって、この訃報には余韻が残る寂しさをおぼえている。

今年のロシアの前回、ブラジルで開催されたサッカーW杯にちなんで、グループで料理教室のデモンストレーションをしたりしたっけなぁとその時の仲間と久しぶりに集い、飲んだ。4年という時間の流れの中で、皆それぞれひどく傷ついたり、泣く日々もあった。入学時に思い描いていた未来から全く想像も出来ない今を生きているけれど、こうして元気にハッチャケながらお酒を酌み交わせているのならそれだけでしあわせなのかもなぁ。

最終の実習授業を終えたところを写真に収めた。昼組は主婦ばかりだが、夜組は仕事と勉強の両立で散々怒られながらもみんなよく頑張った。(本blogの”中の人”は被写体なのか、撮影者なのかは記さない。ご想像にお任せする(笑))

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<ごはん日記>

[番外編] 生うにとキャベツのスパゲティ

[番外編] 生うにとキャベツのスパゲッティ

かつて、実家の近くに海鮮の扱いがとても上手なイタリア料理店があり、行くたびに頼んでいたスパゲティの味を思い出しながら、ご家庭で作りやすいように再現してみた。

調理時間:15分以内 

2人分の材料:キャベツ 1/16玉(5cmの幅)、にんにく 1かけ、アンチョビペースト 大さじ1、白ワイン 大さじ2、プチトマト 5個、乳脂肪分40%以下の生クリーム 50cc、牛乳 150cc〜、オリーブ油 大さじ1、スパゲティ 180g、うに デザートスプーンにややこんもりと2杯分ほど 

調理の流れ:中くらい〜大きめの鍋に水をなみなみとはり、強火にかける。にんにくは皮をむき、包丁の腹で押しつぶし芽を取り除く。キャベツの芯は薄切りに、葉の部分はざく切りにする。フライパンにオリーブ油、にんにくを入れてこんがり色ずくまで弱火でじっくり炒める。鍋の水が沸騰したらザルに入れたキャベツをぽちゃっとつけて、再沸騰したら引き上げる。鍋に塩を加え、お湯がグラグラわき始めたらスパゲティを入れて茹でる。フライパンからにんにくを取り出し、アンチョビペーストを加えヘラ(スパチュラ)でかき混ぜて油となじませる。白ワインを注ぎアルコール分を飛ばしたらプチトマトを入れて、ペースト状になるまで水分を飛ばしながら炒める。キャベツを加え混ぜ2~3分ほど炒めたら、生クリーム、牛乳を注ぎ一煮立ちさせ、うにの半量を加え混ぜて火を止める。茹で上がった麺をフライパンに入れざっと混ぜる。最後に残りのうにをのせる。

出来上がった料理:うにのスパゲティといえば、落合シェフ(ラ・ベットラ)が有名で、とても美味しくお家で再現できるが、それなりの分量のなるたけ新鮮なうにが必要となるので、今回は少し気軽に楽しめるレシピを作ってみた。

ポイント①にんにくはオイルにほんのりうま味を移すために炒めるので、スパゲティには入れない。②キャベツは芯も薄切りにして加えることで、甘みがさらに増す。③生クリーム、牛乳を加えて一煮立ちさせた後に味見をし、足りないようなら塩少々を加える。④ソースはお皿に盛り付けたときに見えるくらいたっぷりとゆるゆるした状態をイメージして作る。

画像ではソースがかなり少ない盛り付けになっているが、実際はもっとタプタプ。うにの量が少ないものの、うにのうま味は存分に楽しめるし、あまり重くもなく、残ったソースはパンにつけてお皿から綺麗にぬぐいたくなるほどの美味しさ。

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お店ではなくて、お家でちょっとしたご褒美に食べるなら、うにはこの分量で十二分に美味しく作れる。キャベツの甘みがまたこのソースを引き立ててくれて良いのです。 

普段スパゲティを作るためだけにうにを買う人は限られるだろうけれど、手巻き寿司パーティなどで万が一にでもうにが余った時や、疲れ果てた自分や家族を甘やかしたい時にスーパーでうにのパックと目があったら(笑)騙されたと思って、そして力まずに作ってみてほしい。

 

坂田さんの料理本を再現している最中だが、脇道にそれて久しぶりにオリジナルレシピを掲載した。足しげく通っていたイタリア料理店ではこのスパゲティのみ手打ち生麺を使っておられたほどのスペシャリテ。幾度食べたかわからないほど大好物だったが、そのお店も閉じられて数年が経ち、何度か試行錯誤を繰り返しながら、まずまず理想の味を作れるようになった。先週ふらっと訪れた松本でお蕎麦、地物の食べ物と日本酒にまみれて体重がどぉんと増したのに、こんなものを食べていても良いのかと呵責を覚えるが、タフな下半期が待ち構えているし、一年を無事に折り返せたお祝いでよし!

このところFMでよく流れてくるのが9月に26年ぶりのニューアルバムを発表するNile Rodgers & Chicの先行シングル Nile Rodgers & Chic feat. NAO & Mura Masa, "Boogie All Night"(アーティスト名がやたらに長い) 1952年生まれの先輩を見習って、こちらもまだまだ頑張ろう。


Nile Rodgers & Chic team up with NAO & Mura Masa to Boogie All Night on Later…

<ごはん日記>

【お知らせとお詫び】このblogについて

いつもご覧頂きまして、ありがとうございます。

現在いろいろと手直しをしている最中でして、時々繋がりにくくなったり、いつも見られていたのに急に閲覧拒否されるなんて事態が発生している可能性があります。この週末までにはアップデートしますので、しばらくご容赦ください。 

54冊目『和えるおかず』から2回めはアスパラガスの卵和え

[54-2]『和えるおかず』から2回めはアスパラガスの卵和え(p.57)

坂田阿希子著、 株)世界文化社発行、 ブックデザイン 縄田智子 L'espace、撮影 新居明子、スタイリング 佐々木カナコ、取材・構成 新田草子、編集 北野智子 2017年7月25日初版発行 

暑さにめげそうになるけれど、スーパーには北海道から南下して秋田や新潟のみずみずしいアスパラガスが並び始めていたので、さっとパッとできる料理を再現。

調理時間:10分ほど

主な材料:グリーンアスパラガス、卵、オリーブオイル、塩コショウ。

調理の流れ:鍋にお湯を沸かし、卵を入れてきっかり所定の時間茹でたら、すぐに冷水にとり殻をむいておく。フライパンを熱し、オイルとアスパラガスを入れてこんがり焼き付ける。食べやすい長さに切ってからボウルに入れ、半熟卵、オイル、塩コショウを加え混ぜる。

出来上がった料理:「野菜の”和え”おかず」より、すくすくと育てられた新鮮な素材、アスパラガスの味をじんわりと楽しむためのシンプルな和えものを再現した。

季節になると名産地(うちの場合はほぼ北海道)より、箱単位でプレゼントしていただくアスパラガス。茹でるのも美味しいけれど、オイルでソテーすることで、アスパラガスのナッツのような風味と甘みが増して、初夏にはつい食べ過ぎてしまう。

フランスやイタリア系の料理ではポーチドエッグと合わせ、黄身をソースがわりに食すことが多いが、ポーチドエッグをキレイに作るのは思いの外に難しいから、日本ならではの半熟卵で良いのでは?で生まれたのではないかとわたしが勝手に推測したレシピ。半熟卵だけだから、マヨネーズより健康的で、でもそのぶん味のごまかしは効かないので、美味しそうなアスパラガスを入手できた際に、そしていつもの調理方法では食べ飽きた際にぜひお試しあれ。

熱々はそりゃあもう最高に美味しいけれど、少し冷めると不思議にチーズみたいな味がして、それが面白く、いずれにせよ白ワインがくいくいっと進む。

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かろうじてそら豆を見かけるものの、スーパーでは枝豆の売り場面積が広がってきた。きぃんと冷えたビールの季節でもある。

 

十数年前に、ネットや店舗で個人情報欄に記入するための誕生日を作った。パスワード、PINコードやら諸々誕生日から憶測されることも多いし、適当に記入しても誰にも迷惑はかからないだろう!で、作ってみたら、企業より仮の日におめでとうございますメールがやたらに届くので、ありがたみがないというか、いや、頻繁にお祝いしてもらえてhappyな気分を味わわせてもらっている。うん。これはおめでたい!と、架空の誕生日(その1)を祝いに、早めの夏休みを重ねて、当面は行けそうにない松本へ旅立つ。1日数食お蕎麦を食べ、夜はへべれけになろう。

paulがriverpoolに帰郷、思い出の地をめぐる番組がyoutubeにアップされて数日になるが、何度観ても涙が溢れ出てくる。3世代に渡り愛され続けているこのアーティストを、生で何度も、生まれ育った日本で見られたのは忘れられない出来事だったなぁ。新譜も出してくれるなんて、ことばにできないくらいに嬉しい。 


Paul McCartney Carpool Karaoke

<ごはん日記>

54冊目『和えるおかず』から初回は豚しゃぶとみょうがの胡麻和え

[54-1]『和えるおかず』から初回は豚しゃぶとみょうがの胡麻和え(p.8~)

坂田阿希子著、 株)世界文化社発行、 ブックデザイン 縄田智子 L'espace、撮影 新居明子、スタイリング 佐々木カナコ、取材・構成 新田草子、編集 北野智子 2017年7月25日初版発行 

久しぶりに30度近くまで気温が上がった金曜はさっぱりした和え物を。

調理時間:10分ほど

主な材料:豚肉しゃぶしゃぶ用、小口切にしたみょうが、薄切りにしたきゅうり、種を取り除き叩いた梅干し、白ごま、しょうゆ、梅酢、ごま油、酒 

調理の流れ:鍋にお湯を沸かし、酒を加え一煮立ちさせたら、豚肉を一枚ずつ広げながら入れてふんわり火が通ったものから取り出し、キッチンペーパーの上にのせ水気をきり、粗熱をとる。薄切りにしたきゅうりは塩もみした後しばらく置き、両手で握りしっかりと水気を絞る。小さなフライパンを熱し白ごまを煎ったら、すり鉢に入れてすり潰す。ボウルにすりごま、梅干し、しょうゆ、梅酢を加え混ぜてからごま油を注ぎ混ぜ、とろみがついたら豚肉、みょうが、きゅうりを入れて和える。

出来上がった料理:「肉の”和え”おかず」より暑い季節に食べたくなる梅風味の豚しゃぶを再現した。

夏は暑くて台所で火を使うのも億劫だという人もいらっしゃるが、お湯を沸かしてしゃぶしゃぶ用のお肉を茹でるのはものの数分で済むし、煎りごまはフライパンの中で胡麻の一粒一粒がぷっくり膨らんでいくのを見ていたり、ほのかに香りが立ってくるのは思いの外楽しいもので、2分もかからず終わってしまう。すり鉢でするときにプチんと小さく弾ける音やぐんと濃くなるごまの香りは料理する人だけが体験できることなので、(できれば)市販品のすりごまを使うよりごまから煎ることも時々やってみよう。

調味料を混ぜ合わせ、味見をすると甘みが少し足りない気がしたが、全ての食材を和えてからパクリと口にすると、豚肉のうま味が引き立つようなバランスだったことに気がつく。砂糖やみりんを使わず、甘みはあえてごまだけにしたことによりすっきりした梅しょうゆ風味と豚肉を仲良く、美味しくさせる役割を担っているんだなぁ。

レシピに豚しゃぶ用のお肉が特に指定されていないのはありがたい。肩ロース、バラ肉などお好みの種類でどちらでも。わたしは脂身が多い分固くなりにくく、ぷるんとした食感のバラ肉を好むが、ロースならよりさっぱりとした美味しさを味わえる。

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枝豆、冷奴にこの和え物が食卓に並んだなら、ゆっくりとでもくいくいっとお酒を楽しめる。この夏、繰り返し作る一品になりそうだ。

 

ここ数ヶ月、仕事以外の夜のお誘いは断って引きこもり生活を送っていたが、先週からぼちぼち復帰。昨日は3軒はしご酒をしてよい気分で寝入ったところ、火災報知器のすざまじい音で叩き起こされる。このマンションは2年ほど前も夜間に報知器の誤作動をしているし、煙くさくもないので、無視して寝続けようとしたが、あまりにも長く鳴り続けているし、屋外が慌ただしい雰囲気になってきたので、貴重品をカバンに詰めて部屋を出る。階段にはホースが渦巻き、消防隊員さんが現状確認中ですと声をかけてきてくれる。おおごとになっているが、煙は漂っていないし、においもしないので、どうなっているんだろう???で、しばし真夜中の東京にひとりぽつんと佇む。結局今回も誤作動だと判明したのには安心したが、管理会社には早めにきちんと対応して欲しい。

さて海や山が、おいでおいでと呼びかけてくるような季節がやってきた。真夜中の火災訓練みたいな非日常はあまり経験したくないが、気分を入れ替えたり、体を休められる時間や場所に出会えますように。すてきな週末を!

ご機嫌なステージだが、客席もすごい。わかりやすいところではpaul, ringoにyoko onoまで。(paulは2018年9月7日に新譜発売予定!)


Daft Punk Pharrell Williams ft Stevie Wonder 2014 Grammys High Quality ( GET LUCKy)

<ごはん日記>